撮影裏話 映画『張込み』に寄せて
2018年 11月 22日
「パンのある風景」と題して連載を続けたのは2009年9月から2011年3月までの19回。その連載が好評だったので、「続パンのある風景」として2012年9月から2014年1月まで復活掲載させてもらいました。一地方都市の地域文化誌として無料配布される冊子にしては熱の入った連載記事でした。本屋さんで売られている書物、小説でもいいし、エッセーでもいい、あるいは誰もが見ることのできる映画やドラマ、そんなものを題材にして原稿を書いてもらう。そこから編集部でその場面を再現し、写真を撮って、原稿と併せページを作るというのがコンセプトでした。
そろそろ原稿が滞り、一般読者から届かなくなったころ、困った編集部が苦肉の策で作った1ページ。「パンと言えば『張込み』だろう」と誰かが言うので、そりゃ名案!と乗ったわけです。だいたい刑事ものドラマとかサスペンスなどで刑事さんが車の中から容疑者を見張って張り込むと、差し入れられるのがパンと牛乳。定番ですよね。ということで、アンパンを買いに走り瓶入りの牛乳を求めて牛乳屋さんへ。そこで、現実を知るわけです。
今時、アンパンは高級品。中のあんこは栗入りだったり大納言だったり。いいんです、そんなにお高いアンパンでなくて。普通のスーパーなのに、なぜ普通のアンパンがない?普通のアンパンを買うのにまず一苦労。さて、次は牛乳です。これがまた、瓶入りがない!あっても、昔の形ではないのです。もちろん紙でできた蓋付きなんて、もっとありません。探しました。三鷹のアンチーク屋さんで、昔の牛乳瓶にラベンダーの芳香剤を入れてまるで牛乳に見える、紙でできた蓋付き!そんなインテリア商品を見つけました。これじゃん!これこれ。小躍りしながら買って来て、そしてこの日、雨が降っていたのですがこんな1枚を撮りました。まさに、工場跡みたいな容疑者のアジトで張込みです。
さて、みなさん、松本清張原作 野村芳太郎監督の『張込み』をご覧になったことありますか? 映画をちゃんと観ればわかります。刑事さんが食べるのはカレーライス。アンパンの出てくるシーンは一度もありませんでした。
by hibiemiri
| 2018-11-22 22:53
| パンのある風景